【レイバーシフト】 その2

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ちなみにタイトルの【レイバーシフト】は、アルビン・トフラーの「パワーシフト」にヒントを得た造語です。

 

 

 

初回の【レイバーシフト】では、日本を代表する製造業の職種別従業員構成が、生産・技術職3割以下、ホワイトカラー6割以上と異常な人員構成になっている事をお伝えしました。

 

 

就活生はこの大企業製造業、つまり上場一流製造業企業に就職するとしたら、どんな職種を望んでいるのか?調査区分でいうと「営業等販売部門従業者」か「事務部門従業者」でしょう。そして出世して「管理部門」になりたい訳ですわ。

 

生産現場の人員は、オートメーション化や生産性の向上などで確かに大量の人員は要らないです。製造業のリストラって言うと、工場の閉鎖とか、3交代制を2交代制にするとか、派遣切りとかのブルーカラーの人員削減が従来の主体でした。並行して製造現場は、設備・機器・ロボット(AI)化を進めてスリム化した訳です。

 

今度は、営業や事務などホワイトカラー職種が、IT化、AI化、アウトソーシング化でスリム化する番です。そうすることで、従業者数が減少すれば比例して当然管理部門も減ります。モノ作りの現場を持つ製造業なら、直接部門(生産従業者)50%以上、間接部門50%未満が妥当と思われます。つまり、現状の直接部門28%の人員数そのままで間接部門を半分以下まで減らせば約半々になる訳ですので、間接部門64%の半分以上がリストラ対象と言えます。こうして間接部門も人員を削減してこそ、企業全体のコスト削減が完了し、製品の価格への人件費反映が薄まり、国際競争力アップになるのです。

 

つまりバブル崩壊の1990年台から始まった企業の「リストラクチャリング」は、未だ道半ば、ブルーカラー部門のリストラは完了しつつあるが、ホワイトカラーのリストラには未着手であるという事です。

 

一昔前みたいに、取締役経験者を監査役とか相談役とか顧問とかで多数飼っておく習慣も無くなりつつありますし、昨今は取締役会設置会社も委員会設置会社も、役員少数化の流れになっていますし、上場企業は社外取締役の割合が増えてきています。

 

 

 

 

今度は銀行証券など金融機関を見てみましょう。

 

金融業は「オールホワイトカラー」の職業です。現在、IT、AI、フィンテック、キャッシュレスなど技術革新が急速に進んでおり、従来のように支店でカネ数えたり、ハンコ確認したり、何枚も何枚も伝票を起票したりする事務職は激減することが確実視されています。

 

日本の3メガ銀従業員数合計約12万人が、今後3年ほどで9万人台になるよう採用抑制をしています。なんと従業員数25%の削減。これ、みずほなどの3メガ銀だけです。全銀協の資料によると、平成30年度の全銀協加盟行の全従業者数は33万人。12000人の従業員数を抱えるゆうちょ銀は全銀協に加盟していません。ネット銀行系の多くも全銀協に加盟していない。信用金庫、信用組合も除かれています。

 

そうするとゆうちょ銀や信金、信組まで含めて約40万人近いの金融機関従業者数があるとすれば、削減率25%=10万人のホワイトカラーが削減されます。

 

キャッシュレス化が進むと金融機関店舗に存在する現金が減ります。数える手間暇、移動や輸送、保管の手間隙などどんどん減ります。現在は顧客が出入金を紙に書いていますが、近い将来タブレットやスマホ入力に以降するでしょう。そうすると、伝票の確認・転記・その他の事務量は大幅に減ります。

 

 

少し話がズレますが、さほど遠くない将来に印鑑制度も廃止になるでしょう。本人確認が目的のハンコですが、顔認証・サイン認証・指紋認証などに代替されることは確実です。今年はじめに、印鑑制度改革が叫ばれましたが、各種団体の圧力で印鑑制度改革が先送りになりました。表立って反対表明をしたのは印鑑製造販売の業界団体ですが、実は印鑑業界は「おみこし」のようです。印鑑業界を押し立てて後ろに隠れて印鑑廃止に強く反対している圧力団体は、自治労などの地方公務員の労働組合と金融機関の労働組合のようです。

 

 

あるレポートでは、もし印鑑制度が完全廃止になると都道府県市町村役場、税務署・公証人役場・法務局などの職員が約2割削減されるという試算があります。そりゃそうですね。印鑑証明が不要になれば自治体の業務量が減ります。という事は、税金が原資の地方公務員人件費が2割削減されるというメチャくちゃビッグな「行革」になります。

 

(つづく)

 

フィリップ カレッジリング

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