最終工程のひとつ、洗浄のオペレーションを変更しました。
最終工程の概要は、
バフ研磨 → 洗浄 → 乾燥 → 黒美仕上げ →乾燥 → 完成
ですが、その洗浄作業を修正・変更したのです。
課題がありました。
それは、主にセンターストーン裏のクレーター(石載せ前の石座の口の空いた部分)に洗浄水が残留し、乾燥工程でしみ出して、せっかくピカピカだった地金にシミが付いたり、輝きが鈍ったりする事があります。
クレーター
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もうひとつのケースとしては、主にチャンピオンリングなど体積の大きなリングの場合、「内部ス穴」と言う空洞がアリの巣のように地金内部に存在する事があり、そこにも洗浄水が残留して、乾燥工程でしみ出してくる事もあります。
その悩みを解決するため、まず超音波洗浄機について再度勉強しました。
Philip College Ringで使っている超音波洗浄機は28kHz(ヘルツ)。この周波数帯は最も洗浄力が強力だが、超音波によって発生するキャビテーション(振動泡)の作用で長時間照射すると金属皮膜表面を逆に荒らしてしまうことがあるので、照射時間は最小にするのが良いとの事。
模式図↓↓↓↓↓
上記のように、キャビテーションが汚れのみでは無く、金属表面の薄い被膜まで弾いてしまうので、艶が失われたり、逆に目に見えないス穴が大きくなったりする事もあります。この28kHzキャビテーションは、アルミ箔に穴を開けてしまうほどの威力だそうです。
そのために、こびりついている汚れが浮いてくるように、60℃前後のお湯に専用の洗剤を入れて5-10分間しっかり浸漬して、超音波照射を最小(1分から1分半程度)にする。
更に、超音波洗浄するとバフの時に使うコンパウンド(磨き粉)が洗浄水に出て汚水になるが、その汚水がクレーター内に入り込んでしまうので、2次洗浄として再びきれいな60℃湯に数分間浸漬し、ごく短時間の超音波洗浄を行うリンス工程を追加しました。この60℃という液温も2つの点から大事。ひとつは、水分子が最も活性化する温度が50-60℃だそうですので、活性化した水分子を超音波キャビテーションで物理的に動かして、隅々まで汚れや油脂分をこそげ取る事になります。そしてバフ研磨に使うコンパウンドには油脂分が含まれますが、その油脂分がやはり最も活性化(ゲル化)するのも60℃。
手間が増えましたが、本当にきれいになります!
長時間超音波照射した時より地金も輝きが増し、隅々まで綺麗になります。