カレッジリングの仕上げに使用する各種の薬剤があります。
有機溶剤のアセトン、シンナー、強アルカリ尿素、変色防止膜形成剤などなど。最も使用頻度と用途が広いのはアセトンですが、特に地金の仕上げに重要な薬剤は尿素アルカリ溶液です。
シルバー、ゴールドともに鋳造(キャスト)の後に、カーボン除去と組成安定の目的で希硫酸に浸漬します。Philip College Ringの金型鋳造法は、目に見えるか見えないかのス穴がたくさん発生しますが、中には「アリの巣状」になって地金内部に狭い洞窟を形成する事があります。
その「アリの巣」に強酸である硫酸が残存すると、後から酸性水分が染み出してきて地金を変色させてしまう事があります。例えば、仕上げした後、1日乾燥させて箱に詰めようとしたら一部が茶色に変色していた・・・・とか、、、。最悪なのは、お客様のお手元に届いた後に同様の症状が出てしまう事です。
それを防止するには、二つの方法がります。
1. 超音波洗浄機で「アリの巣」内の酸性水分を完全に除去する
2. 強アルカリ液に浸漬して、アリの巣内の酸性水分を中和させる
但し、1.の方法では限界がありますし、地金を長時間超音波洗浄機にかけると地金表面を傷めます。そこで2.の化学的に中和させる方法の方がベター。アルカリ溶液といっても多種あり、地金や石に悪影響を与えない薬剤を選ばねばなりません。
現在、使用しているのはアメリカ製の尿素薬剤、コノシュアー。
国産で、最近大容量入りを発売したシルバーシャイニングという薬品を試したいと思い、1本だけ購入しました。
もう一つの薬剤実験は、シルバーの変色防止剤。
変色防止の最も強力な方法はロジウムメッキですが、ロジウムの場合銀の柔らかな色合いが若干変わってしまい、プラチナ独特の銀灰色になってしまいます。そこで変色の原因になる「硫化膜」を形成させないように、無色透明の単分子構造膜を形成する薬剤があります。
現在使っているのは、やはり米国でNo.1シェアを誇る「ナノジュエリー」という商品名で成分はアルカンチオールという植物由来の成分のもの。
しかし、つい先日、アルカンチオールに浸漬したはずのナチュラル仕上げのリングが、数か月で変色した・・・というクレームがありました。アルカンチオール浸漬を忘れてしまったのか???それとも何らかの理由でアルカンチオールが効かなくなったのかは不明ですが、とにかく問題が起きた事は事実。
そこで、アルカンチオール以外の単分子構造膜形成薬剤も試してみようと、購入したのが最近成分を変更して評判が良いと言われる「シルキープ・ネオ」。
シルキープという薬剤は以前からあり、当時、比較実験の結果ナノジュエリーの方が良いと判断していたのですが、「ネオ」の名を付けてリニューアルしたらしいので、今一度比較試験をしようと。
そこで、同一ロットでキャストして、在庫になっているナチュラル状態のリング4本を綺麗に洗浄して比較試験をしています。
1本は、コノシュアーに1分浸漬。もう1本は、シルバーシャイニングに1分浸漬。もう1組の方は、洗浄→シルバーシャイニングに1分浸漬後にナノジュエリーに1分浸漬/シルキープに1分浸漬。
この状態のまま、2-3か月放置して変色変質を観察します。
結論が出るのは来年2月か3月です。
結果はブログでご報告しますね。