海岸浸食=気候変動=地球温暖化

3月16日(日)の読売新聞1面の記事デス。

この数年に発生した世界各地の大規模自然災害を気候変動の観点から問題提起した読売新聞1面左上の掲載されているシリーズ記事「気候 減災」です。この日の主文は、世界的に有名なフランスのワイン産地ボルドー地方メドック地区で3か月に10mも海岸浸食が進んだ・・というもの。
他にも、アメリカのミシシッピやテキサス州などメキシコ湾岸の浸食問題、日本では湘南二宮町の問題など。。。そしてワタクシの住む千葉県一宮町では50年間で110mも海岸が浸食された・・という記事も。
九十九里浜南端の砂浜の町、一宮町ではワタクシが住んだ20年前から海岸浸食が大きな問題でした。
実はこの問題、数年前までは浸食そのものよりも公共工事問題として地元で争議になっていました。海岸が浸食しているので、どんどん護岸工事やったり、テトラポット投入したり、防砂林を整備したり・・・と多くの公共工事が行われましたが、それでも浸食が進むのです、、、、なんだか工事の悪影響でどんどん海岸が浸食されているのでは??という意見までも出されました。(ただ、コレは間違い)
そうして行政や工事関係の利害のある方々と、観光やマリンスポーツ(一宮町の場合はサーフィン)と環境保護の人達の間で大きな争議になってしまったのです。
特に、一宮町は「日本一のサーフィンのメッカ」。一般的イメージの「サーフィンと言えば湘南」は偶像でして、実は「サーフィンと言えば上総一ノ宮(かずさいちのみや)」が実情に沿った形容詞なのです。人口1万人、海岸線約6㎞の小さな町ですが、1年を通してコンスタントに波があり、それも国内トップクラスのハイクオリティなサーフィンに適した波があります。数々の国内、国際サーフィンコンテストが毎年開催され、年間を通して多くの首都圏サーファーが訪れます。
20軒近いサーフショップ、数か所でのべ2000台以上収容する有料・無料の海岸沿い駐車場、サーファー・観光客向けの多数の民宿・ホテルなど宿泊施設、飲食店、コンビニなどの商店。サーフボード工場やウェットスーツ工場、フィンやボードケースなどサーフィン周辺用具の問屋やメーカーが集積。そして、海岸近くに家を建てて住む人々の多くはサーファーです。(ワタクシの家は海岸から2Kmの山の中デスけど・・・)
この人々にとって、海岸線をどんどんコンクリート化する護岸工事は「敵」に見えてしまうのです。でも、海岸は徐々に浸食されています。そして、地元の工務店や土木事業者も公共工事で生計を立てています。
ワタクシと非常に仲の良い町内に住む同世代のサーファーのK君は、「海岸環境を考える会」を主催し、ネットやサーフィン団体などを通じて、数万人もの署名を集め、千葉県と一宮町の行政にこの公共工事のあり方に異議を唱えました。動機は、彼の家の前のサーフィンポイントにテトラポッドを大規模投入するという工事計画が出たためです。
数万人の署名を突き付けられては、行政や工事利害関係者も話し合いのテーブルに着く以外ありません。定期的に県の土木担当や町の土木担当者、工事関係者、観光・商業関係者、サーファーや自然保護団体などとの協議の場が設けられました。
協議当初は、少々モメゴトもありました。土木関係者さんの中には少々威圧的な方々もいて、「考える会」の人達に日々の生活圏内で「強い口調」で話しかけるという事です。イケマセンね~、、、まるで反社会的勢力のようなやり方。
町長選や町議選、商工会議所の役員選挙など政治的な部分も騒動に巻き込まれる事態も。
そのモメゴトの代表格、「6号ヘッドランド」の工事が、重要工程を先日終了しました。縦に伸びたピアと呼ばれる堤防に、約50mのT字型テトラポッド(ヘッドランド)が投入され、縦堤と横堤がつながりました。

当初案では、縦堤防の沖にヨコ数百mものテトラポッドを投入してしまうという案で、非常に景観が悪くなり、サーフポイントも消滅するというもの。
この当初案の問題点は、約30年以上前に計画された工法で、当時は護岸に効果有りと思われていたのですが、他の浸食の激しかった海岸で同様工法が先行実施された結果、実は効果が無い事が近年実証されてしまっていたのです。逆に横に広がったテトラポッドによって、自然海流とは別の「カレント」と呼ばれる離岸流が発生してしまい、逆に砂浜の流出が発生して浸食が更に進み、海水浴客などが離岸流に巻き込まれてテトラポッドに挟まれて溺れたりする事故が多発するなどの問題が顕著になったのです。
お隣の旧夷隅町(現いすみ市)の海岸では、この横テトラ投入によって海岸沿い民家のすぐ足元まで海岸が来てしまったという実例もあります。
にも関わらず、「予算がついている・・・計画が決定している・・・」とお役所仕事の典型例で工事が進められていたのです。こういう経緯で、海岸線の保護や土地の保全問題なのに公共工事とそれを糾弾する側の衝突になってしまいました。時まさしく、民主党政権で「コンクリートから人へ」の掛け声のさなかでもありました。
K君とワタクシとは、一宮町に移住した20年前から家族ぐるみの付き合いで、まさに「親友」ですが、実はワタクシはこの「考える会」の活動には少々賛同出来ず、距離を置きました。長年の付き合いで一緒にサーフィンしたり酒を飲む仲のK君、無言の中でも彼もワタクシの考えを察知したようで、活動への支援や協力などの要請は一度も言ってきた事がありません。
でも、K君の活動は立派に実を結び、結局サーフィンや景観など一宮町の重要な観光資源に配慮する形で、護岸工事の計画を修正するという結論には辿り着いています。県や大学の土木工学関係者が計画を見直し、実質的に海岸浸食を食い止めれる「だろう」という短いヘッドランド方式の計画に変更になりました。ただ、その効果は定かではありません。前例が無いからです。
ワタクシ、この一宮町だけではなく世界中で進む海岸浸食には2つの大きな要素があると考えております。
ひとつは、河川の護岸工事や周辺海岸線の護岸工事による土砂供給の減少。
もうひとつは、地球温暖化による海水面の上昇。
九十九里浜の場合、利根川や一宮川をはじめとする房総半島東側に注ぐ河川の護岸工事が進んだ事で、川が海に運んでいた砂が減少してしまった事。そして、九十九里浜の北端と南端の崖、屏風ヶ浦と太東崎の2か所が激しい浸食で崩落寸前だったので、やはり護岸化されて、崖が波に洗われて発生していた土砂の供給が減少した事。
つまり、南北に流動しながらも九十九里浜を形成していた砂の供給が無くなったので、砂浜が減少。
では、河川や崖の護岸工事に反対か?っていうと、ワタクシ反対ではありません。狭い国土の日本で、ワタクシ達が生活する重要な国土、不動産を保全することに何ら異論無しデス。河川の護岸がなければ、江戸時代のように大雨の度に河川が氾濫し、人々の住居や田畑を浸水させてしまいます。崖が削られるという事は、その周辺に住んでいる人たちの大事な家屋不動産が脅かされるという事です。
そんでもって、その河川や崖の護岸化の影響で砂浜が減少している我が町の海岸線の浸食を食い止めようとする工事にも反対しません。もちろん、自分のライフワークであるサーフィンの出来るポイントが減少するのはイヤなモノですが、サーフィンのような娯楽と生活基盤の不動産が浸食されて無くなってしまうかも・・・という大きな問題を混同するのは宜しくないと考えました。
ただ、公共工事予算というカネ欲しさに効果の無い工事を進める関係者はアホ以下ですね。
「公共の為の工事」=「この場合海岸浸食による土地の減少」対策で税金使うなら、キチンとワタクシ達の土地の浸食を食い止める研究をして、キチンとした工事をシナサイ!って事です。工事には賛成、工法に反対って立場ですね。そして、工法を論じるのは、ワタクシ達納税者のするべき事でしょうか?
違いますよね。
そのために、行政には専門家の「技官」と言われる人達がいるのですから。
キチンと仕事しなさい!
土木関係業者も、プロとしての矜持とプライドがあるならば、30年以上前に計画された効果の無い工法で工事やってカネ貰う事を恥じなさい。自分の仕事に誇りを持つというプロ意識の欠如が甚だしいデス。
ただ、それダケを思うのです。
そして、決定的なのは温暖化による海面上昇。
この温暖化対策問題こそ、現代社会に生きるワタクシ達が本当に真剣に考え、行動しなければならない事だと思っております。ワタクシ達の孫子の世代に、国土と家土地を残そうとするならば、真剣に向き合わなければならないのは「温暖化防止対策」です。
これ、言い出すと長編小説になります。。。このへんでやめておきます。

フィリップ カレッジリング

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