打合せ4か月、製作期間3か月の大作

I様は海上自衛官。
最初にお問い合わせを頂いたのは昨年の7月。来春の海上自衛隊幹部候補生学校の卒業を記念してカレッジリングをお作りになりたいとの事。そして、航海でスリランカに寄るので、現地でご自身で天然石を調達して、その石を載せて欲しいとの事。
もちろん「ワガママ放題ならPhilip College Ring!」ですから、お請けしました。
ちょうど、航海に出られる前にI様が東京に来られる用事があるとの事で、面談してリングモデルやデザインの大まかな打合せをしました。そして図面制作開始。
しかし、寄港中はメールも接続出来ますが、外洋に出ている際には連絡が取れません。そりゃ、衛星回線や海上無線なら大丈夫でしょうけど電話回線のネット接続は無理。だから、図面の打合せも途切れがちではありましたが、スエズ運河航行中はずっと連絡が取れていましたねー。
東回り航海で、欧州からスエズ経由でインド洋に出た頃(スリランカ寄港前)には、なんとか図面の打合せも終わり、石の寸法を弾き出し、その寸法の天然石を調達して頂くようにお願いしました。
実は、天然石をオーダーメイドカレッジリングに載せるのは、あまり簡単ではありません。要素はふたつ。まず天然石は人口石と違い「お決まり寸法」でカットされていません。カレッジリングで一番良く使うサイズは、オーバルファセット(楕円形ダイヤモンドカット)11*9mmですが、人口石ならもちろん11.0mm×9.0mmぴったりです。しかし天然石の場合、10.7mm×8.8mmとかになっちゃいます。これは原石からの取り都合とか、インクルージョン(内包不純物)を避けてカットしたりするから。
そしてリング本体も、地金の「冷却収縮」によって0.5mm前後の出来上がり寸法ズレが起きます。地金は、「延展性」といって叩いたり伸ばしたり、そしてカット・研磨などで調整出来ます。
通常、人口石を載せる場合は石サイズは不動、リング地金部分で調整・・・・となります。
天然石の場合は、両方の寸法が不安定要素。
そこで今回は、リングの方の図面上の石留めサイズを決め、I様に出来るだけそのサイズに近い石を調達頂くお願いをしました。しかし天然石には、上記のように若干の変動要素があるので、リング本体の石留め部を調整&石自体をリカット、、の双方を想定しました。
デザイン上のポイントは「両舷灯」といって、船の左右にどっちを向いて進んでいるかわかるように付けられている全世界共通のグリーンと赤のライトをイメージした天然エメラルドとルビーの小粒石を石座両脇に留める事でした。
そしてI様がスリランカで調達され、帰国後にお送り頂いた石がこちら。

気に入った石を大目に購入されたようです。
いちばん大きな石は、アクアマリン5ct!日本で買うと20万円コース。

ゴールデンイエローサファイヤ、アレキサンドライトなども。そして両舷灯用のエメラルドとルビー。写真にはありませんが、小粒の極上天然ダイヤモンドもお買い求めになり、送ってきていただきました。
これらの石とサイズを念頭に、最終確定した図面がこちら。

1個は、14KWGでソリッドトップと言うセンターストーン無しの古典的なカレッジリングのスタイル。
両舷灯を表すエメとルビーが効いてます。
石座には、海自のアンカー(錨)と桜マークの中に16菊。
サイドパネルは、海自幹候の校章と卒業年、もう片方には出身校の東京大学の校章と卒業年。
16菊、海自幹候マーク内の桜、東大校章内の「大学」の古典漢字はイエローゴールドのツートンカラーに。
同じ型を使用し、普段使い用にシルバー製でセンターストーンを載せたタイプ。
こちらには大粒の天然アクアマリンと小粒石のダイヤモンド。
このダイヤ、本当に極上品でした。
正式にご注文頂きましたが、かなり微細な彫刻なことと、リング本体が出来上がってからの石載せ工程にも時間がかかるので、製作期間も3か月強とたっぷり頂きました。
ゴールドリングの半製品状態の時の写真。

「両舷灯」のエメとルビーを留めた状態。


この後、Philip College Ring必殺技のホワイトゴールド加工を施し、そしてイエゴーゴールドを露出する部分を再度削り出しという工程がありました。
シルバーリングには、アクアマリンとダイヤモンドを留めて、どちらもナチュラル仕上げで。

詳細は、カレッジリング博物館でご覧ください。
14KWG        
 
シルバー&アクアマリン

 

フィリップ カレッジリング

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